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相続放棄,ちょっと待って! [相続]

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 突然の相続に直面した際,注意が必要なことがあります。図のような家族関係でAさんが亡くなった場合,Aさんの遺産を妻のBさんが全て相続し,その中から子ども達(Cさん,Dさん)を育てていくという遺産分割を希望する御家庭があると思います。このような場合,「子ども達(Cさん,Dさん)に相続放棄させてしまえば問題ないんでしょ?」とおっしゃる方がいらっしゃいます。

 しかし,そうではありません。民法は,相続人の順位を決めております。配偶者(Bさん)は常に相続人になります(民法890条)。そして,子(Cさん,Dさん)が第1順位(民法887条),直系尊属(Eさん,Fさん)が第2順位(民法889条)となっております。
 ここで,子(Cさん,Dさん)が相続放棄してしまうと,子(Cさん,Dさん)は,相続人とならなかったものとされます(民法939条)。つまり,第1順位の相続人がいないため,第2順位の直系尊属(Eさん,Fさん)が相続人になるのです。そうなると,Aさんが遺言を残していない場合,配偶者(Bさん)がAさんの遺産の3分の2を,直系尊属(Eさん,Fさん)が3分の1を(Eさんが6分の1,Fさんが6分の1)相続する権利を取得することになります。

 このような事態になることを防ぐためには,子(Cさん,Dさん)に「相続放棄」ではなく「相続分の放棄」をしてもらう必要があります。「相続分の放棄」とは,相続人の地位は持っているけれども,相続にあたり自分の取り分はいりませんという意思表示になります。子(Cさん,Dさん)が未成年者の場合,子の財産管理権を持っている親権者(Bさん)と,子に「相続分の放棄」をさせることで自分の取り分が増える配偶者(Bさん)が同じ人ですので,子(Cさん,Dさん)と親権者(Bさん)の利害が反することになります。このような場合,家庭裁判所に特別代理人という,子(Cさん,Dさん)の利益を守るための代理人を選任してもらい,その特別代理人が遺産分割に参加し,子(Cさん,Dさん)の「相続分の放棄」を行うことになります。

(石本恵)

速やかな民法改正を!~婚外子違憲判決 [相続]

2013年9月4日、最高裁判所大法廷は、民法の婚外子相続差別規定を憲法に違反すると判断しました。
これを受けて、民法改正が動き出す可能性が大きくなってきました。
そこで、今日はこの話題について書きたいと思います。

現在の民法では、法律上の婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子どもと、そうではない子どもとの間に相続を受ける権利に差があるのです。
こんな事例で考えてみましょう。
登場人物
太郎さん:花子と結婚
花子さん:太郎と結婚
一郎くん:太郎と花子との間に生まれた子ども
夏子さん:太郎と花子とが別居した後、太郎と知り合い、事実上夫婦に。
秋子さん:太郎と夏子との間に生まれた子ども

ストーリー
太郎は花子と結婚して一郎が産まれましたが、一郎が2歳のころ、花子との関係がうまくいかなくなり、別居することになりました。
しかし離婚の話合いはなかなか進まず、別居して10年が経ちました。
太郎はそのころ、夏子という女性と知り合い、同居生活を始め、事実上夫婦となり、秋子という子どもも産まれました。
花子との離婚が成立していないので、太郎と夏子とは法律上結婚できませんが、太郎、夏子、秋子は仲良く家族として生活を続けていました。
月日は過ぎて秋子が20歳になったころ、太郎は突然の事故で、残念ながら亡くなってしまいました。
さて、太郎は1200万円の財産を残しましたが、これを受け継ぐ権利はどのようになるでしょうか?


まずは、法律上の妻である花子が2分の1で600万円。
法律上太郎とは婚姻関係にない夏子には相続権はありません。

残りの2分の1は、子どもが均等に分けなさいというのが民法の大原則です。

ところが、ここで婚外子差別規定。
秋子は、法律上結婚していない太郎と夏子の間に生まれたので、「婚外子」と呼ばれますが、民法は、婚外子は、結婚している夫婦間に生まれた子供の2分の1しか権利がありませんよ、と定めているのです。

つまり、秋子は一郎の半分しか権利がないのです。
ですので、一郎が残りの600万円のうち、400万円を相続できるのに対して、秋子は200万円しか相続できません。

太郎と一郎が一緒に過ごした時間は2年間、それに対して、太郎と秋子が家族として一緒に過ごした時間は20年です。

そもそも、「婚外子」であることは、何ら秋子の責任ではありません。
秋子はただ太郎の子どもとして生まれてきたという点では、一郎と何ら変わらないのです。

今回の最高裁判決は、このような民法の規定は、「すべての人は平等である」と定めた憲法14条に違反する、と判断しました。

要するに、一郎も秋子も、同じ太郎の子どもなんだから、残りの600万円は半分ずつにするのが正当でしょという判断です。

結婚した夫婦の子とそうじゃない子の間に、相続の権利に差があるのは当然!

そんな意見も聞かれるようです。
「法律婚を守る」という立場からは、法律上の結婚をして生まれた「正当な子」とそうで子との権利に違いがあって当然ということなのかもしれません。

だけど、法律婚をするかしないかを決めた親の選択について、子どもが責任を負わされるのはおかしいと思いませんか。
法律上の妻(ここでいう花子)は2分の1の相続権を持ち、事実上の妻(ここでいう夏子)には何の相続権もないとなっていますから、当事者間では法律婚は守られています。
それ以上に、産まれてきた子どもに責任を負わせる必要性や合理的理由はないと思います。
不貞をして子どもが産まれた場合にも、責任は当事者たる親(ここでいう太郎、夏子)にあるのであって、その責任は「慰謝料」という形で不貞の当事者が解決すべきことです(その不貞の慰謝料が、現在の裁判基準では極めて低いことは、また別の問題ですが…。)。
いずれにしても、産まれてきた子どもには、何らの責任のないことです。

憲法は、全ての人は、生まれながらにして平等と謳っています。
出生によって差別されることがあってはいけない、それは、憲法が明確に掲げていることなのです。

私は、今回の最高裁の判断は、しごくもっとも!もっと早くにこのような判断がなされてしかるべきだった!と思っています。

法律上結婚しているかしていないかにかかわらず、自分らしく生きたい、そのことによって子どもの権利が侵害されることがあってはいけないという願いは、男女を問わず、切実だと思います。


実は、民法のこの規定を含めて、
① 婚外子差別規定の撤廃
② 選択的夫婦別姓制度の導入(希望する人は夫婦別姓でもいいですよ~という制度)
③ 婚姻年齢の男女統一(現在は男性18歳、女性16歳で結婚可能となっていますが、これを男女統一するようにということ)
④ 再婚禁止期間の廃止(現在は、女性のみ、離婚後半年は再婚できないことになっていますが、その撤廃)
は、国連の子どもの権利委員会、女性差別撤廃委員会、国際人権規約委員会から、何度も勧告を受けています。

国内でも、1996年に民法改正の法律案要綱が出されて、すでに17年が経過していますが、改正案は何度も国会でお蔵入りにされ、未だ実現されていません。

日本政府は、国連に対し、「国民的議論を深めたい」という回答をしていますが、国連からは、今年の7月、ついに、「勧告を履行していない」という厳しい判断を受けました。

私も所属する福岡県弁護士会でも、2009年に上記民法改正を求める会長声明を、当時の政権に提出しました。

今回のこの判決が出たことで、少なくとも、婚外子差別規定撤廃の方向で、民法改正が動き出すことは間違いありません。

できることなら、その機会に、そのほかの3つに関しても、改正が進んで欲しいものです。


個人的には、特に、選択的夫婦別姓の導入!
私自身、結婚するときに名字をどうするか、事実婚という選択をするのかどうか、とっても迷い、
今も迷い続けている者として、切実にこの制度の導入を求めたい気持ちです。

(選択的夫婦別姓制度についての記事は、こちら↓)
http://josei-kyodo.blog.so-net.ne.jp/2012-04-29


弁護士 H