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後見制度支援信託と遺言の仕方 [後見]

 皆様は,成年後見人をご存知ですか?成年後見人とは,精神上の障害(例えば,認知症等)により判断能力が十分でない人(「ご本人」とお呼びします)を保護するため,家庭裁判所が選任する人のことを言います。成年後見人は,ご本人に代わって財産を管理したり,生活・医療・介護等に関する契約を結んだりして,ご本人が安心して暮らせるように活動します。

 成年後見人は,親族が選ばれたり,弁護士のような専門職が選ばれたりします。親族が選ばれる場合に心配されるのが,成年後見人がご本人の財産を勝手に使い込んでしまわないかということです。
 成年後見人が管理している財産を勝手に使い込んだ場合,民事責任(損害賠償責任)や,刑事責任(業務上横領罪)を問われることになります。しかし,成年後見人が使い込んだ額以上の財産を持っていないと,ご本人の財産を元通りにすることはできませんよね。

 そこで新しく始まったのが,後見制度支援信託というものです。これは,ご本人の財産のうち,日常生活に必要十分なお金だけを成年後見人に管理してもらい,その他のお金は信託銀行に管理してもらい,成年後見人が信託銀行からお金を引き出すためには家庭裁判所が発行する「指示書」というお墨付きが必要となるというものです。これを利用すれば,成年後見人がご本人の財産を勝手に使い込むリスクを減らすことができますので,家庭裁判所が利用を勧めてくることがあります。

 しかし,後見制度支援信託も,ご本人が思ってもみなかった事態を招く可能性もあります。それは,ご本人が,判断能力がまだ残っているうちに遺言書をこっそりと書かれていた場合です。後見制度支援信託を利用する場合,日常生活に必要十分なお金以外のお金は,金融機関から払い戻してもらい,信託銀行に預け入れることになります。また,価値の変動が激しい株式のような金融商品も,売却してお金に換えて,信託銀行に預け入れることがあります。

 もし,ご本人が,「福岡銀行には1000万円を預けていたな。○○株式会社の株も持っていたな。」と考え,ご長男に1000万円と○○株式会社の株式を遺すつもりで,遺言書の中で,「遺言者は,株式会社福岡銀行天神支店 普通預金(口座番号0123456)の預金債権及び株式会社○○の株式を,長男太郎(昭和57年2月16日生)に相続させる。」と書き,ご本人が亡くなった後にひょっこり遺言書が出てきた場合はどうなるでしょう?ご本人が亡くなった時点では,この預金や株式は,信託銀行に預け入れているお金に形を変えてしまっていますので,ご本人の計画どおりに相続させることができなくなる可能性が高いのです。

 こうなることを防ぐためには,「遺言者は,遺言者の有する預貯金の中から金2000万円宛を長男太郎(昭和57年2月16日生)に相続させる。」という風に,財産が形を変えて別の金融機関に移動しても構わないようにしておく必要があります。

 老い支度を考えていらっしゃる皆様,自分の判断能力がなくなった後に後見制度支援信託を利用することになるかもしれませんので,遺言書を書かれる際は弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士 石本恵