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釜山弁護士会との交流② ~養育費確保のための諸制度 [離婚]

引き続き、釜山訪問について。

討論会での第2のテーマは養育費問題でした。
日常業務の中で、最も痛切に制度改革が必要と感じる分野なので、討論テーマにしてもらい、報告を担当しました。

●まず日本の問題から。
これは、主に、
①取り決め自体少ない、②金額が低い、③不払いへの対処が困難という点です。

○取り決め自体少ない
取り決めること自体が少ないのは、離婚の制度によるところが大きいです。
日本では、養育費を決めなくても協議離婚ができますが、このように当事者間で自由にできる協議離婚は、諸外国では一般的というわけではありません。
自由…と言えば聞こえがいいですが、裏を返せば、力関係次第ということ。
「もめたくない」「応じてくれないから」と養育費を取り決めずに離婚するケースも多々あります。
統計では、養育費の取り決めがされたのは、母子世帯で37.7%、父子世帯で17.5%。
離婚種別でいえば、協議離婚で30%に対し、裁判所が関与する離婚(調停・和解・判決)では74%。裁判所の関与の有無で全然違います。
が、裁判所が関与するのは離婚の1割強に過ぎません。

○金額が低い
日本では、養育費の額は、簡易算定方式で算定します(検索ワード「養育費・簡易算定表」)。けれども、この方式は、文字通り「簡易迅速な算定」を目的に作られたもので、子どもの育ちに必要な水準という観点に欠けているので、金額が、単身世帯の父親の手元に残る額に比較して低く、特に教育費がかさむ中高生ではその低さが目立ちます。

○不履行への対処が困難
さらに、不払の場合の有効な手立てが乏しく苦労させられます。
給料や預金を差し押さえ(強制執行)できますが、勤務先や預金先が分からないと手続ができません。
そのため、継続して支払われている割合は、母子世帯で20%程度という実情です
(前述のとおり、取り決め自体が少ないので、逆に、取り決めがあるケースでは過半数は払われているということになりますね)。

こうした実情が、離婚後の母子家庭の貧困の一因ともなっており、早急に、きちんと支払われるよう制度改革が必要です。

●韓国では…
この点、韓国では、以下のような制度となっています。

◎取り決め段階 ―裁判所の関与
韓国では、数次の法改正により、協議離婚が厳格化されています。
まず、家庭裁判所で協議離婚の意思の確認手続が必要です。
具体的には離婚に関する案内を受講した上、熟慮期間の経過(子どもの有無により1カ月または3カ月)と、養育費や面会交流に関する協議書か家庭裁判所審判の提出が必要です。協議書の内容が子の利益に反する場合はつき返されます。
このように、協議離婚といっても、当事者の力関係に委ねず、子どもの利益を守るために積極的に国が介入する制度になっています。
なお、熟慮期間はDVなど緊急の場合は短縮があります。

◎金額 ―子の養育に必要な額という観点
算定表がある点は日本と同じですが、日本と違い、両親の合計所得の水準ごとに、両親が負担すべき養育費の上限・下限が記載され、具体的な分担は両親の経済状況により決められます。
子どもの年齢層ごとに金額が決められており、日本の算定表より高額です。
例えば、合計所得300万円台の場合、3~5歳で7.3~9万円、15~17歳で11.5~12.3万円程度です
(子ども1人の場合の例。この額を夫婦で分担する)。
写真.JPG

◎不履行への対処 ―養育費履行確保のための法律
通常の強制執行の他に、以下のような履行確保のための制度があります。
・財産明示・財産照会制度
 …裁判所による財産リストの提出命令、関係機関への財産照会
・直接支払命令
 …2回以上不払の場合、裁判所の命令により、雇用主から直接養育費を払わせる制度
・担保提供命令
 …支払う者の不払や資力の変動に備え、不払を受けて、裁判所による支払義務者に対する担保提供命令制度
・一時金支払命令
 …不履行時の制裁として、担保提供命令に応じない場合、全部または一部を一時金で払うよう命令できる制度
・制裁強化
 …養育費の不払や財産目録の提出拒否などの義務違反に対し、上限70万円規模の過料の制裁や、一時金支払命令に応じない場合、身柄拘束が可能となる制度。

以上に加え、2014年に養育費の履行確保のための法律が制定され、国の専門機関が設置されました。

このような制度の下で、養育費支払は義務としてきちんと確定すれば、支払われる割合は73%とかなり高いそうです。
ただ、まだ支払確保のための制度が十分知られていないので、周知して権利行使につなげることが課題とのこと。

質疑応答では、日本には、養育費の不払に対して特段のペナルティがないということに、かなり驚かれました。

韓国では、2000年代に養育費の不払が社会問題になって、これら支払確保のための制度が次々に整いました。
翻って日本では、目下、債権一般について強制執行の強化のため、裁判所を通じた口座情報開示制度の導入について検討が始まったところです。
その早期実現と共に、特に子どもの育ちに不可欠な養育費の重要性から、適切な金額水準への引き上げや、特に支払を確保するための方策や強力なペナルティを導入するなど、子どもの福祉の観点からの制度改革が強く望まれます。

相原わかば

新しい年、12年目ぶりの電話 [離婚]

先日、ある女性から電話をもらった。
12年ぶりの電話。

「元気に、働いています。」

私が知り合った時、彼女はまだ小学生だった。
身体のあちこちに包帯を巻いて、たくさんの辛い経験を抱えていた。

彼女と関わる仕事が終わってからも、何かにつけて彼女が思い起こされてきた。
けれど、私の中の彼女は、いつまでも、小学生のままだった。

その彼女が成人し、社会にでて働いているという事実。
生き生きとした声に、嬉しさがこみあげてきた。

たくさんの心身の傷や痛みを越えて得た、彼女の新しい人生。
彼女の毎日が、気持ちの豊かなあたたかなものでありますように。
彼女の幸福を祈らずにはいられなかった。

どんなに辛い毎日も、経験も。
決して乗り越えられないと思える出来事も。

時間をかけて成長をすることで、乗り越えていけることもある。
それは、先延ばしでも逃げることでもなく、乗り越える力を得るために必要な時間だと思う。

乗り越える最中に、崩れ落ちそうになったり、誰かと傷つけ合ったりしても、
乗り越えた後の人は、傷を受ける前よりも、ずっと強く、優しくなっている気がする。

完全になかったことにできなくてもかまわない。
そんなの大したことない!と思える自分を目指して、新しい時間をすごせれば、それでいいと思う。

誰にとっても、新しい時間は必ずやってくる。
大人にとっても、子どもにとっても。

今年に入って読んだ本のフレーズを思い出した。

「今日、生まれたと思えばいいじゃないか」

「あんたは、今日、生まれたんだ」

長引く戦禍に、「この戦争で家や財産。親、兄妹なにも失ったことのない者などいない」と言った、アフガニスタンの男性の言葉(※)。

状況は全く違うけれど。
たくさんのものを失いながら、でもその分、あるいはそれ以上に、たくさんのものに出会える期待と可能性をはらみながら、世界中の女性達や子ども達に、それぞれの新しい1年がはじまった、と思う。

※佐藤和孝(2006)『戦場でメシを食う』,新潮新書

(弁護士 郷田真樹)


共通テーマ:恋愛・結婚

日弁連意見書 「養育費支払確保及び面会交流支援に関する意見書」が出されました。 [離婚]

*養育費について*

 当事務所も、養育費について、 ① 支払義務者に、子どもへの生活扶助義務(支払義務者の生活を犠牲にしないでよい程度に子どもを援助すればよい義務)ではなく、生活保持義務(支払義務者と同等の生活を子どもにさせる義務)を課すことや、 ② 養育費の合意形成や取立てについて公的機関などを利用しやすい制度を整えて、 離婚後の親子においても、適切な扶養協力が行われることを強く求めたいと思います。  特に、母子家庭の相対的貧困率の突出した高さ、子どもの貧困とその連鎖を思う時、適切な養育費の支払確保は、国として取り組む最重要課題であると考えます。  たとえば、ヨーロッパ諸国には国による養育費立替払い制度(後に国が義務者から強制徴収)が、英米系諸国には国による養育費取立て援助制度(強力な居所・転居先調査の協力、給与天引き払い制度、刑事制裁等)があり、日本の養育費不払いへの無頓着さは、いわゆる先進諸国の中ではむしろ珍しいとも言われています。  かかる状態を早急に解消し、親の離婚に関わりなく、全ての子どもが両親の経済状況にみあった生活を維持できるようになることを望みます。


*面会交流について*

 面会交流についても、原則として離婚後であっても親子の交流が続くことが望ましいと考えますが、理念が先走りすぎて当事者に不可能を強いることがないよう、離婚直後の高緊張・高葛藤の状態にある父母への配慮、DVや児童虐待がみられるケースでの当事者の安全・平穏な生活への配慮などを含め、その家庭の現状に即した丁寧で適切な検討が進められていくことを求めます。  また、面会交流の実施にあたって、様々な当事者が利用しやすい第三者機関の拡充は不可欠と考えます。


*私達の願い*

 離婚をする夫婦の9割前後が協議離婚をしている日本では、以上のような養育費の決定や取り立て、面会交流についての相談・合意や実施手続きが、裁判所に限らず、行政機関などの当事者が利用しやすい機関において行うことができるようになることが重要と思われます。 私達は、養育費についても、面会交流についても、当事者の利用しやすい、子どもの福祉に適した制度や施設の拡充がなされていくことを期待します。


※ 今回の意見書は、平成25年11月21日に、日本弁護士連合会が、「養育費支払確保及び面会交流支援に関する意見書」として取りまとめ、11月28日に最高裁判所長官、11月29日に総務大臣、都道府県知事、12月2日に厚生労働大臣へ提出したものです。

※ 意見書提出に至る、民法改正、行政及び家庭裁判所の運用の動きなどについては、本日付け別稿「民法766条改正後の、養育費・面会交流について考えるべき課題(日弁連意見書から)」に記載をします。

※日弁連意見書
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/opinion_131121_6.pdf

(郷田真樹)

民法766条改正後の、養育費・面会交流について考えるべき課題(日弁連意見書から) [離婚]


*民法766条改正(平成23年5月27日改正、平成24年4月1日施行)*

平成24年4月1日、改正民法が施行され、766条に、協議上の離婚をするときに協議で定める「子の監護について必要な事項」の具体例として、「父又は母と子との面会及びその他の交流」(面会交流)及び「子の監護に要する費用の分担」(養育費の分担)が明記されました。  そしてその際には、子どもの利益が最優先されなくてはならないことも明記されています。  これらは、子どもの権利条約(1989(平成元)年国連が採択・翌年発効、日本は1994(平成6)年に批准・発効)の趣旨にそう改正です。


*社会の実情*

このような法改正が行われる前提として、平成23年段階で、離婚をした夫婦の6割以上が養育費の合意をしておらず、8割以上の子どもが養育費の支払いを受けておらず、7割以上が面会交流の取り決めをしていないという社会実態があります(厚生労働省2011(平成23)年度全国母子世帯等調査結果報告より)。


*離婚届の記載欄の変更*

 この民法改正を受け、かつ、上記のような社会実情を乗り越えるため、法務省は、平成24年4月から、離婚届の書式に「親子の面会方法」や「養育費の分担」の取り決めを記載する欄を設けました(もっとも、記載をするか否かは任意とされています)。


*家庭裁判所の状況*
これらの流れを受けて、家庭裁判所における離婚調停・面会交流調停などにおいても、面会交流へ向けての合意形成が強力に推進されるようになりました。  しかし、日本弁護士連合会がその意見書(平成25年11月21日付)においても指摘をしたとおり、「面会交流調停の早い段階から面会交流実施についての強い説得が行われるなど合意形成を急ぎすぎる例,高葛藤の父母間の事案において第三者による支援の見込みのないまま審判により面会が命じられ履行不能となる例,DV事案や児童虐待事案への配慮が不十分な例など,課題のある例も少なからずみられるのが現状」といえます。  養育費についても、その算定金額が低額にすぎ育児負担の実態に即しないこと、「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」が適切な改訂・事案に即した修正、矛盾の解消などがなされないままに利用され続けている問題もあります。  また、養育費の取り立てについては、完全に権利者個人の問題として放置され、権利者の経済的困窮・単身世帯としての時間のなさ・調査能力の不足、義務者の転居・転職など様々な事情によって、権利行使が実質的に不可能ないし困難となっている場合が非常に多くあるように思われます。


* 私達の願い*

このように、民法改正後も、面会交流、養育費に関しては、様々な課題が残されています。 私達は、行政・司法関係者、当事者など社会全体の努力によって、養育費についても、面会交流についても、より多くの夫婦・親子が利用をしやすく、かつ子どもの福祉に適したに制度や施設の拡充がなされていくことを期待します。



※日弁連意見書に関しては、別稿「日弁連意見書『養育費支払確保及び面会交流支援に関する意見書』が出されました。」に記載をします。

※日弁連意見書
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/opinion_131121_6.pdf

(郷田真樹)

今年も始まりました!アミカスとのコラボ企画〜あなたの人生サポート講座〜 [離婚]

 女性が生きていく中で直面する法律問題は様々。そのライフステージ全般において、私たちが法律的にサポートできればと思い、福岡市男女共同参画推進センターアミカスとのコラボレーション企画として昨年より始まった「あなたの人生サポート講座」。女性が直面しがちな法律問題をそのライフステージごとに取り上げ、困ったことにならないためにできる事前の準備や、困った場合の対処法などを全6回に分けて講演させていただきました。

 今年も、昨年に引き続いて、全6回にわたる「あなたの人生サポート講座」がスタートしました。初回は、5月25日(土)で、「交際中のあなたへ」と題し、デートDV、ストーカー問題、寿退社のリスクなどについてお話しさせていただきました(初回の様子は、西日本新聞5月26日(日)朝刊にとりあげていただきました!)。

 今後も、毎月1回、下記のテーマで講演を行います。
(いずれも土曜日、13時半〜15時半)
 6月22日:働くあなたへ〜知って守ろう働く権利〜
 7月27日:親になったあなたへ〜親子関係を巡る法律知識〜
 8月24日:離婚に直面しているあなたへ 前編
         〜DV・親権・面接交渉・養育費について〜
 9月28日:離婚に直面しているあなたへ 後編
         〜財産分与・慰謝料・年金分割について〜
 10月26日:親と自分のこれからを考えているあなたへ
         〜老後と介護を巡るお金の話をしてみませんか〜

 女性の人生の様々な局面に起こりうる問題と、そのときに知っておくと役に立つかも!?な情報を提供させていただく予定ですので、どうぞ足をお運びください。
 受講は無料で、託児もありますので(要事前申込み)、小さなお子様連れでも大丈夫!アミカスのホームページから申込みができます。各回先着40名様まで、各回の終了翌日より、次回の受講申込みが始まります。次回の申込みはすでに始まっておりますので、興味のある方はお早めに!

https://amikas.city.fukuoka.lg.jp/modules/eguide/event.php?eid=456


(原田純子)

離婚後に死亡した時、親権は ~遺言のすすめ~ [離婚]

やっとの思いで親権を得て離婚が成立した後、これからの生活を思う時、自分が死んだ後、子どもはどうなるんだろう、元夫に親権が渡るのだろうかと不安に駆られることがあると思います。
親権者が死亡した場合には、未成年者後見が開始することになり、存命の親(元夫)が当然に親権者となるわけではありません。 未成年者後見は、親族等の利害関係人が家庭裁判所に申立てて、選任してもらいます。他方、元夫も親権変更を申し立てることができます。 祖父母等の親族等からの未成年者後見人選任と元夫からの親権変更と、両方の申立がなされた時は、家庭裁判所は、生活環境や生活態度、負債の状況などを調査して判断することになります。
…やっぱりこれでは安心できませんね。 でも、大丈夫。未成年者後見人は、遺言で指定することができます。自分の死後、子どもを委ねる人をきちんとしておきたい、という場合には、遺言を作成して未成年者後見人を指定しておくことをお勧めします。
以前扱った交通事故事案で、離婚後、一人で幼い子どもを育てていたお母さんの死亡事故のケースがありました。娘の悲報に心を整える間もなく、祖父母は、親権変更を主張する夫と争わなくてはならなくなりました。唯一の相続人である子どもに代わって、事故の損害賠償交渉をするにも、後見人か親権者が決まらなければなりません。
遺言なんて財産のある人の話、年をとってからの話、とは限らず、残される大切な人に思いを伝え、守るもの、と考えておくことも大切です。 なお、未成年者後見人には、さらに第三者の目として後見監督人を選任することもでき、こちらも遺言で指定できます。
相原わかば

離婚時の年金分割 [離婚]

 離婚する時、婚姻中に蓄えた財産(預貯金や不動産など)だけでなく、将来もらえるはずの年金を分割する制度が、平成19年4月1日から始まりました。分割の割合は、原則として0.5ですが、このことから、夫がもらう年金の半分をもらえると誤解している方が多いようです。そこで、この年金分割についてご説明しましょう。
1 年金の種類(遺族年金や障害年金は除きます)
 年金には、会社員が入る厚生年金と、公務員が入る共済年金、自営業の方や無職の方が入る国民年金があります。
 また、受給する年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金、退職共済年金があります。
   国民年金に入っていた人は、老齢基礎年金だけ、
   厚生年金の人は老齢基礎年金と老齢厚生年金、
   公務員の方は、老齢基礎年金と退職共済年金を受け取ることになります。

2 分割の対象
 分割の対象になるのは、厚生年金の報酬比例部分である老齢厚生年金と退職共済年金だけです。基礎年金や企業年金は対象外です。
 年金の額は、現役時代にどのくらい年金保険料を納めたかという「保険料納付記録」を基に決められます。現役時代の給与の額によって保険料が決まるので、給与が高い人は年金も高いということになります。基礎年金は、定額なので、保険料の多寡は報酬比例部分の方に反映されるのです。年金分割制度は、この「保険料納付記録」の婚姻期間中にあたる部分を分割する制度です。つまり、「夫が払った保険料の一部分を、妻が払ったことにして、記録を書き換えてくれる」→「夫の半分くらいの給与でずっと働いていた人と同じくらいの年金がもらえる」という制度です(夫の方が収入が多い場合)。
 具体的に見てみましょう
 40年サラリーマンとして厚生年金を納めると、老齢基礎年金は786500円、これは分割されません。
 報酬比例部分の厚生年金が100万円とします。このうち、結婚期間中に収めた保険料に対応する年金額が75万円とすると、この75万円が分割の対象になるのです。
 共働きでは二人の報酬比例部分を合算して分けます。夫からもらうだけでなく、自分の分も半分にしなければなりません。しかし、多くの場合は、夫の方が収入が多いので、結果としては夫から妻に何%かの分割をすることが多いのです。
 50歳以上の方であれば、日本年金機構に年金分割のための情報提供書を請求すると、分割によりどのくらい増減するかの額を示してくれますから参考にしてください。

3 実際の手続きは?
 離婚の際に、協議で年金分割の合意ができれば、二人で年金事務所に行くか、書面を作って公証役場で認証してもらいます。これを年金機構に提出して、年金分割の請求をします。
 合意ができないときは、家庭裁判所で調停をし、それでも合意できなければ、審判で家庭裁判所が決めてくれます。この場合は、ほぼ0.5になりますから、協議でする場合も、これを参考にして、決めるとよいと思います。その後年金機構に届けるのは同じです。
 年金機構への分割請求は、離婚後2年以内にする必要がありますので、気を付けて下さい。
 なお、何歳で分割請求しても、実際にもらえるのは自分が年金をもらえる年になってからです。
 離婚を考えておられる場合は、離婚後の生活、老後の生活にとても重大な影響を及ぼす問題ですから、ぜひ、弁護士にご相談下さい。

女性と家事 [離婚]

 私は、片付けがとても苦手だ。
 
 とりあえず積み上げてしまうので、仕事デスクの上は、しばしば山積みになる。
 自宅でも同じで、置き場所が決まっていない物を、つい、部屋の隅とか台所のカウンターの上などに置いてしまうので、掃除をしたり作業をするときには、まずそれをどけなければならない。いらない物は捨てる・・というのが鉄則らしいが、なかなかできない。
 戸締まりもうっかりが多い。朝起きたら、窓がすっかり開いていたとか、玄関の鍵は閉まっているけど、勝手口は開いていたなどということがよくある。
 料理は好きなので、レシピをみたり、テレビ番組等で紹介されたものを、色々アレンジして作る。11年間子どもお弁当を作ったが、余り苦にはならなかった。でも、焦がしたお鍋を磨くのは苦手で、すぐ頭痛がしてあきらめてしまうので、夫がせっせと磨いていた。

 と、ダメ主婦なのだが、どうも世の中には、女性は当然家事ができると思いこんでいる人がいるようだ。離婚訴訟をやっていると、夫側から、いかに妻がダメ主婦かということを示すために、散らかった部屋とか、品数が少ない食事の写真などが出されることがある。そして、それをさぼりとか手抜きとか言われる。でも苦手ということだってある。ましては、好きでもない家事を、一日13時間労働(寝る時間と食事書く時間を除けば拘束13時間労働だ!)でやっているのだから、したくないことだってある・・って思っていただけないのかな・・。

 一方で、夫はお金を稼ぐ人、稼げない夫はダメ夫と思いこんでいる人がいることも確かだ。働かずにお酒、パチンコ三昧だとしたら、離婚したいと思うのは当然かも知れないが、「リストラにあった、病気になったのも夫のせい」では、世の男性もかわいそうな気がする。

 「男は仕事、女は家庭」という役割分担は、本人達がそれが好きで、片働きでも生活していくだけの十分な収入が得られる場合はいいかもしれない。しかし、世の中がそうだから、両親もそうだったからという理由で何となく選択してしまうと、思わぬ落とし穴が待っているということを、つくづく感じる毎日である。
                                                            原田直子

離婚と氏 [離婚]

 以前、結婚と氏について書きましたので、今度は、離婚と氏について書いてみます。
 
 結婚の時、夫か妻の氏を夫婦の氏として選択します。97%の夫婦が、夫の氏を選択していると言われていますので、妻が氏を変えた場合で説明します。 
 離婚の時は、結婚の時氏を変えた人(妻)が元の氏に戻るのが原則です。離婚届の用紙にも、妻が元の氏に戻ることを前提に、元の戸籍(多くは親の戸籍です)に戻るのか、新しい戸籍(自分が戸籍筆頭者になる)を作るのかを選択して記載することになっています。
 でも、長く結婚生活を送り、夫の氏で生活することが定着していると、今更元の氏に戻るのは不便だとか、子どもが名字を変えたくないと言っていると言った場合を考慮して、婚姻中の氏、つまり夫の氏をそのまま名乗ることができます。その場合は、離婚届を出すとき、あるいは、離婚から3ヶ月以内に、その為の届け出をすればいいことになっています。
 
 次に、妻が子どもの親権者になった場合、子どもを自分の戸籍に移す手続きがあります。離婚手続きだけでは、妻が夫の戸籍から出るだけで、子どもはそのまま夫の戸籍に残ります。そこで、これを妻の戸籍に移すためには、家庭裁判所で子の氏の変更の許可を取ります。仮に、妻が婚姻中の氏(例えば田中)を名乗る選択をして、離婚後も夫と同じ氏を名乗ることになっても、子どもは、父の田中から母の田中へ変更する手続きををしなければ、母の戸籍に移れないのです。このように、日本では、戸籍と氏が連動しており、人の氏は、その人が登録されている戸籍の筆頭者と同じ氏しか名乗れないのです。
 但し、子の氏の変更手続きは、とても簡単で、家庭裁判所の書式を使って申し立てれば、2週間程度で決定が出て、これを役所に持って行って入籍届をすれば、簡単に変更できます。
 
 離婚は、それだけでも大変なのに、氏を変える手続きも面倒ですね。でも、離婚の選択は、自分の人生をやり直すという決意の表れですから、新たな幸せに向かって歩み出したいものです。
                                         原田直子

養育費・婚姻費用に簡易算定表の利用、ちょっと待って! [離婚]

離婚や別居に直面した時、別居中の生活費(婚姻費用といいます)や離婚後の養育費をいくらもらえるのか、というのは大事な問題です。
当事者間で金額が決められない場合には、家庭裁判所の調停に委ねることになりますが、現状、実務では、「簡易算定表」が用いられています。ネット検索で入手できるのでご覧になった方も少なくないかと思います。
簡易算定表は、2003年に発表されましたが、以前の実務では、互いに、家計上必要な支出(住居費・医療費・負債・交際費など)の要否をめぐり、主張の応酬が続いて調査が長引き、解決までに長期間を要することが多かったため、こうした弊害をなくそうと、「簡易・迅速な算定」を目指して導入されたものです。
確かに、「勝手に家を出た奴には払わない」とか、無断で作った借金や怪しげな支出を理由に払わないなど、本来通らないような主張にこだわる相手に対しては、裁判所で簡易算定表により「これが相場」と説得してもらう方が早い、という面はあります。

でも、この簡易算定表、非常に問題が多いのです。

ご覧になった方は分かると思いますが、「何で単身の夫がこんなに多くて、子どもを抱えた母子世帯がこんなに少ないの?」と不公平感を覚えるような金額なのです。
これは、大きく2つの要因があります。
第1は、争いが多かった控除額を、必要性の有無や実際の金額と関係なく、収入ランクに応じた一定割合で、しかも多めに控除していること。特に、仕事に伴う費用(職業費)として通信費・小遣い・交際費等が、家計実態と関係なく、大きな割合に設定されています。
第2は、子どもにかかる負担を小さくみて、支払義務者(多くは夫)に甘く振り分けていること。14歳以下の子どもの生活費は大人の55%、15歳以上は90%に設定されていますが、保育料や塾など大人が切り詰めてでも子どもに支出する世の家庭の実態とかけ離れています。

日弁連でも、今年3月、こうした簡易算定表の問題を指摘して、安易に頼るべきではないとの意見を発表しています(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2012/120315_9.html)。

調停実務では、簡易算定表の金額が示されて、両当事者の意見の調整が行われますが、時として、簡易算定表の金額を出発点に減額交渉となってしまう実態もあります。
今年から離婚届出書式に養育費の取決の有無等を記載する欄が新設されましたが、肝心の金額が低い額にミスリードされないよう、簡易算定表が全てではないということを念頭に置かれてください。
私達弁護士も、生活実態に即した養育費の取り決めに努めています。

相原わかば